入院患者の医療・介護保険の併用(後編)

前回からの続きです。

話を戻します。
今回検討されている、通称「180日ルール」を廃止して、医療保険介護保険を併用するという案は、結局のところ、医療療養型病床と入院基本料II群の一般病床を、介護保険に移行させるための手段です。
何日以上の入院を長期入院とするのかは未定であるが、180日前後が基準となると考えて良いと思われます。
医療療養型病床の平均在院日数は595日。
ほぼすべての患者が、介護保険適用となってしまうと考えられます。
これは、実質的に医療療養型病床の廃止ともいえます。
また、入院基本料II群の一般病床についても、一部の患者が介護保険適用となってくると考えられます。
ついに、入院基本料II群の一般病床に、制度対応のタイムリミットが迫られてくるわけです。
急性期に移行できない一般病床は、介護療養型病床と変わりない!ということを、今回の制度変更案は物語っているのです。
 
最後に、施設側から考えてみます。
大病院を中心とした、平均在院日数15日以下の急性期病院は、いわゆる主病が解決したら退院を迫ります。
そのため、地域の急性期でない医療機関と「連携」を取り、転院先を確保しているのです。
従って、例えば、手術が必要な患者であれば、手術をして様態が落ち着くまでが急性期の治療であり、それ以降は慢性期の療養となるため退院してくれということです。
しかし、医療療養型病床では徴収できる費用が安いため、術後の患者を受け入れることはできません。
必然的に、入院基本料II群の一般病床に転院となります。
(リハビリが必要な患者は、回復期リハビリテーション病棟へ)
入院基本料II群の一般病床は、その後のフォローを行い、在宅への退院、施設への転所などを考慮して取り組んでいかなければなりません。
高齢化が進む中、家族問題、金銭問題、介護施設不足などのために、この作業はかなり大変なものであり、多くの方がそのまま入院を余儀なくされてしまいます。
長期入院は、医療施設の入院単価を著しく下げ、経営を圧迫させます。
介護保険の利用となれば、さらに単価が下がってしまいます。
これが、今回の制度改正の目的です。
超高齢化の時代、国は断固たる意思で、医療費削減に取り組んでいます。
もはやぬるま湯的な医療ポジションは、難しい時代になってきています。
皆さんの施設は、どちらの方向に進んでいくのでしょうか?
 
尾崎総合企画
http://www.medisoft.jpn.ch