病院「臭さ」が捨てられないものか?(前編)

様々な医療・介護施設を見学していて思うのだが、施設にいる人々にとって部屋とは何なのだろうか?
病院の病室はさることながら、「居宅」となっている老健、特養、グループホーム、有料老人ホームの居室を見ても、「病院臭さ」がどうしても抜けていない。
あちこちのオムツ交換により、便臭が漂い、食事の後片付けが進まずに生ゴミ臭が漂い、広い廊下も狭い廊下も物で溢れている。
談話室があるかと思えば、下を向いた入所者が集められ、なんとも覇気がない。
どの部屋にもベッドが入れられ、数人部屋で、入居者に妙な緊張感がある。
個室といえど、「ベッド」が主役であり、決して「生活」の場ではない。
ベッドはスタッフのためのもの。
起き上がり動作、車椅子への移乗、ストレッチャーへの移乗など、介護の基本動作にはベッドが便利なのである。
日本人が落ち着ける畳といえば、リハビリの施設基準として高台の6畳ほどの畳部屋があるだけ。
もちろん、壁がなく、部屋から見る風景は介護施設といえど、病院そのものである。
昔からある施設でも、最近立てられた広く明るい施設でも、これは同様のことである。
結論から言えば、本来、住み分けられなければならない各施設に、同等にADLレベルが低下した人々が入っているということである。
痴呆がある、オムツ交換が必要、チューブから栄養が入る、お風呂には週に2〜3回しか入れない、・・・といったレベルの生活環境が、どこの施設でも行われているのである。
これに反して、自宅介護では、家が古かろうと、部屋が狭かろうと、ADLレベルが低かろうと、痴呆があろうと、やはり「家」なのである。
そこは生活の場であって、決して独特な病院臭は漂わない。
この違いは何なのだろうか?

字数の関係で次回へ続く。

尾崎総合企画
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