介護施設の感染対策(後編)

前回からの続きです。
 
主な原因としては、経済的な面と、教育的な面が挙げられる。
経済的な面では、介護施設ではスタッフに手袋を支給していないということである。
医療機関では手袋はディスポ製品、すなわち使い捨てのものを利用する。
洗って再利用ということはあり得ない。
介護施設では、手袋はスタッフ自らが持参することが多い。
当然、掃除用手袋などが多く、破れたら買い換えることなく、素手で行うスタッフも多い。
ディスポ製品の手袋というのは、1枚約5円、すなわち両手で約10円である。
例えば40人の利用者がいる施設で考えると、オムツ交換等が1日5回であったとすると、40人×5回×10円=2,000円。
1年では、1,600円×365日=730,000円となる。
この金額を施設が惜しんでいるため、非常に非衛生的な環境となっているのである。
教育的な面では、感染対策に関する知識について、教育・啓蒙がほとんどなされていないということである。
例えば、掃除用手袋を利用していても、同じ手袋で別の利用者のオムツを交換していては細菌をばら撒いているのと一緒である。
素手で行えば、自らにも感染の危険性が増す。
きちんと手洗いの方法についても、熟知していないスタッフが多い。
手洗いには手洗いの理論がある。
どのような方法で、どのくらいの時間手洗いをすれば、どのくらいの細菌が減るということが示されている。
機械的手洗いと衛生的手洗いの違いについても、教えられていない施設が多いであろう。
不十分な手洗いでは、手指の細菌が一定数以下にならないため、その後の行動により細菌を散布することになる。
厚生労働省は、介護施設で発生しやすい感染症の予防や拡大防止のため、平成17年3月をめどに施設職員向けの分かりやすいマニュアルを作ることを決めた。
医療機関向けのマニュアルは専門知識が必要であり、また介護施設の現状とマッチしていないため、介護施設用のマニュアルが必要だということである。
介護施設の入所者には、医療レベルが必要な高齢者が増えてきている。
MRSA等の細菌を持った方も増えてきている。
今回のノロウイルス問題は、感染された高齢者やスタッフの方には気の毒であるが、介護施設の現状を把握し、きちんとした感染対策が実施されるようになるという面では、非常によい機会であったのではないかと思う。
安心できる施設を目指して、対策に取り組んでいただきたい。
 
尾崎総合企画
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