介護予防について考える(後編)

前回からの続きです。
 
しかし、核家族化、共働きの時代、家族にとって介護負担というのは重い。
日中預かってくれる通所系のサービスを主に利用し、通所のない日に訪問介護サービスを利用すると、介護保険の給付限度額までいっぱいになってしまう。
すると、本来必要な、自立支援のための訪問リハビリテーションや、福祉用具貸与といったサービスを利用できなくなってしまうのである。
現在の介護保険制度は、家族のためなのか、高齢者のためなのか、ということがわからなくなってきている。
次期改定では、訪問介護サービスにおいても、食事を作るのではなく、食事を作るのをサポートする業務に変わっていくようである。
賛否両論であろうが、人間の能力は使わなければ退化していくものである。
可能な限り、できることをしてもらうというのが本来の介護の姿ではないのであろうか?
寝かせきりでの、上げ膳据え膳の介護が、何か間違っていないだろうか?
少し話はそれるが、介護保険の給付限度額というものについても考えてみる必要がある。
介護保険の利点は、給付限度額を超えても自費でサービスが受けられることにある。
(医療の混合診療問題を解決するための制度が織り込まれているのである。)
これまで「福祉」という名のもとに、介護でお金を頂くというのは罪だという意識が強かった。
介護保険導入により1割負担という自費負担が発生するようになったが、まだまだ本人にも介護事業所にも、その意識は強い。
自立した生活を送るために、何故、限度額を超えた分について身銭を切ることができないのか?
また、ケアマネジャーも切らせないのか?
この意識を変えない限り、これからの高齢者時代の医療費・介護費を考えていくことはできないだろう。
日本医師会・医療のグランドデザインでは、2017年の公的総医療・介護費は51.2兆円も必要という数字が出ている。(2003年7月時点)
介護予防導入による社会保障費の削減シミュレーションも行われているが、高齢者も家族も、介護事業所も医療機関も、根本的に考え方を変えなければ、費用の伸びを抑えることは難しいであろう。
ベッドから起こす。指先を使う。話をする。外に出る。リハビリテーションを取り入れる。
何でも介護予防である。
まずはできることから始めてみよう。
 
尾崎総合企画
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