数字の捉え方って難しい

先日、介護予防の効果を検証するために実施したモデル事業(筋力トレーニング)の中間報告が厚生労働省から発表された。
この取り扱い方が面白い。
「筋トレでで44%に予防効果あり!!」
「筋トレで16%が要介護度悪化!!」
新聞によって、違う見出しで掲載されているのである。
中間報告の内容は次の通りである。
 
筋力トレーニングによる要介護度の変化
改善 44%、変化なし 40%、悪化 16%
 
「改善」と「悪化」のみに注目した見出しが出ていたのだが、正確には「変化なし」を厳密に考えなければならない。
筋力トレーニングの意味がなかったのか、筋力トレーニングのおかげで維持されたのか、によって結果は変わってくる。
そもそも、このモデル事業の実施方法は、筋力トレーニングの前後で、要介護度の1次判定をして効果を調べたものである。
はっきりと言えば、あまり意味のない統計である。
なぜならコントロール群(対象群)と比較していないからである。
今回の調査では、コントロール群として、これまでと同じ過し方をされた方々(同程度の人数、要介護度、地方)のデータを調べて、このデータと今回のデータを比較しなければならない。
これまでの方法で、改善が44%より著しく低ければ、悪化が16%より著しく高ければ、筋力トレーニングの効果があるといえる。
しかし、比較というのは難しいものである。
例えば、これまでの方法で、改善が30%、悪化が10%であったらどうであろう。
筋力トレーニングは、効果があるといえるのだろうか、ないといえるのであろうか?
このように、数字の捉え方というのは難しい。
数字の操作や表現の仕方で、全く違った捉え方をされてしまうのである。
今回の件ではないが、「○○治療法によりA疾患の発生率が3%減少した。」という報告が出たとする。
誰もが○○治療法は素晴らしいと思うであろう。
しかし、A疾患の発生率自体が人口の5%とした場合、○○治療法により人口の2%にまで減ったのか、5%の人数から3%減少して、人口の4.85%になったのかということでは全く違う内容となる。
様々な統計数字、集計数字を見る場合には、表現に惑わされないようにする必要がある。
 
尾崎総合企画
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