処方のみ外来について考える(前編)

どこの医療機関もそうだが、「今日はお薬だけで構いません。」という患者をよく見かける。
カルテが医師を通らずに、薬のみがカルテ記載され、診察を受けずとも薬が処方されることが多々ある。
一般人の方々には、「えっ?当たり前のことじゃないの?」と思われるかもしれない。
もしかすると、医療職でも当たり前と思う人が多いかもしれない。
実はこれ、昔からの日本の悪習なのである。
正確に言えば、法律違反、医療機関側を見れば「不正請求」ということになる。
流行っている診療所などでは、医師1人で1日200人程の外来を診ることも多い。
よく考えてみよう。1日8時間びっしりと休憩なく診察したとして1日200人を診ると、患者1人あたりの診察時間は2.4分しかない。
3分診療を下回る時間。絶対に無理なのである。
ということは、受付事務や看護師のレベルで薬が処方されているということ。
処方は医療行為である。すなわち、これは医療法違反である。
次に、当然であるが医師が診察を行っていることを前提にカルテを記載するため「再診料」という料金が取られる。
200床以下の病院では1回2,550円、診療所では1回2,740円の再診料が算定される。
診察を行っていないのに、再診料を請求する。完全に「不正請求」なのである。
これは、注射のみの通院、傷の処置のみの通院、リハビリ・物療のみの通院などでもよく見られることである。
医者からすれば、「多くの患者を診察するためには仕方がない」「慢性疾患では症状が変わらないので診察する意味がない」といわれるかもしれない。
しかし、法律は法律。違法は違法。自らが新しい法律の解釈を行ってはいけない。
この問題を回避するため、大病院などでは「処方のみ外来」専任の医師を置くところもある。
薬のみ欲しいという患者に、「いつものお薬を出しておきますね」と言ってカルテに処方記載するためだけの医師である。
ひどい病院では、やはり診察なしに処方記載している「処方のみ外来」もある。
医師が記載(処方)しているからよい、というものでは決してない。

字数の関係で次回へ続く。

尾崎総合企画
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