現物給付と現金給付(中編)

前回からの続きです。

さて、話は混合診療に戻る。
医療というのは、保険者からの「現物給付」であるため、保険者が認めた医療機関でしか保険証が使えない。
すなわち、保険医療機関でしか保険診療を受けることができない。
保険診療とはどのような診療かというと、「医科点数表」に記載されている医療行為のことを指す。
この点数表に記載されていない診療を行う場合は、保険を使うことができない。
この保険外診療行為と保険診療を同時に行うことを混合診療といい、現在の法律では禁止されている。
1つでも保険外診療行為を行った場合は、すべての診療に対して保険を適用することができなくなるのである。
保険が適用されないということは、10割の負担が発生するということ。
患者側の負担は非常に大きい。
保険医療機関という場所は、保険者の代理人として現物給付を行う場所であるため、保険外診療を行うことを保険者が認めていないのである。
しかし、現実に保険外の行為が必要な場合が多く見られる。
そのため、「特定療養費制度」というものがある。
これは、ある一定の行為は、保険診療とともに行って構いませんよ、という保険者が認めた保険診療外行為なのである。
具体的には、個室利用の場合の差額ベッド代金、200床以上の病院を紹介状なしで受診する場合の初診料、医薬品の治験に係る診療、特別メニューの食事、薬事承認後における薬価基準収載前の医薬品の使用、180日を越えて入院する場合の入院基本料の15%分の金額、などなどである。
「特定療養費制度」とは、混合診療の特別認定制度なのである。
現在、混合診療を認めるか否かについて激しい論争が行われている。
混合診療の全解禁は皆保険制度を崩壊させるとして、日本医師会等が反対しているが(筆者には理解に苦しむが・・・)、特定療養費制度の拡大には賛成している。
このことは、診療の現場で混合診療が必要な場面が多々あることを意味している。

字数の関係で次回へ続く。

尾崎総合企画
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