現物給付と現金給付(後編)

前回からの続きです。

混合診療が解禁された場合に心配されていることがある。
・新しい最先端技術(新薬を含む)に対して、保険が適用されない可能性がある。
・風邪や胃痛、眼疾患、湿布薬など、ドラッグストアで薬を購入できる範囲の医療が保険適用外となる恐れがある。
大きくはこの2点である。
お金のある人は、10割分を負担しても保険適用外の最先端技術で医療を行い、お金のない人は病院にかかることができなかったり、十分な医療が受けられなくなる可能性がある、というのが日本医師会の言い分である。
かなり過大解釈の理論であるが、皆さんはどのように考えるであろうか?
小泉首相混合診療の解禁が裕福層の優遇につながるとする説明を「おかしい」とする見解を示した。)
そもそも、混合診療の議論についても、根本的な問題は医療の財源がないということである。
軽度の疾患については病医院を受診して保険財政を使うまでもないというのも一つの考え方である。
そして、さらに根本的な問題は、国民が「現物給付」に慣れきってしまっているために、保険財政を浪費しているという意識が少ないことにある。
そこで、最初の「現物給付」と「現金給付」の話題に戻るわけである。
「現金給付」であれば、一旦、10割分の全額を支払うため、自分にかかっている費用がどれくらいのものかを実感することができる。
その上で、「現金」が返ってくるため、給付のありがたさも理解されやすい。
(医療の「高額医療費制度」が償還払いという「現金給付」方式であるため理解しやすい。)
しかし、現在の介護制度は「現金給付」でありながら、「現物給付」と何ら変わらない方式で運営されている。
これでは、介護においても、自らがどれだけの保険財政を消費しているか理解されず、結局は医療と同じく驚異的な介護費の伸び率となってくることは容易に想像できる。
医療も介護も「現金給付」方式がよいのではないか?
診療内容を2段階方式にして、保険診療ではここまで、混合診療ではここまで出来ますよ、ということでもいいのではないか?
(実際に、介護では現物給付枠を越えたサービスを自費で利用することができる。)
介護保険制度は、新たな医療保険制度の実験台であると筆者は考えている。
しっかりと実験を行い、よりよい医療保険制度の創設を期待している。

尾崎総合企画
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