普段の生活を大切に(前編)

ヨーロッパでは、高齢者が病院で入院をするときには、本人の持ち物を多く持たせるという。
それも、物入れやタンスごと、すなわち数多くの持ち物を持たせるというのである。
これはどういうことであろうか?
持ち物には、一つ一つに「思い出」という歴史が詰まっている。
そのため、持ち込んだ持ち物を眺めたり、触ったりしていると、それが刺激となり、回復が早まるというのだ。
逆に、家庭においても、古いからとか、いらないからとか、収納場所がないからといった理由で高齢者の持ち物を捨ててしまうと、脳刺激が弱まり、思考能力が衰え、
急に弱ったり、痴呆症状が生じたりしてくる。
高齢者と話をしていると実に面白い。
最近のことはよく忘れる人でも、昔話となると、「今、そこにいるように」詳細に鮮明に話を聞かせてくれる。
(人によっては、目をつむったまま、永遠と話してくれる方もおられる(笑))
昔話をしている時間は、本人の脳はフル稼働の状態であるため、話し相手になるということは痴呆を抑制するには最良の方法である。
毎回、同じ話でもかまわない。話をさせることは非常に効果的なのである。
この時も、病院や介護施設で話を聞くより、自宅で聞く方がより多くの事を語ってくれる。
それは、周囲にある持ち物がきっかけであったり、住まいがきっかけであったり、住み続けた土地柄がきっかけであったりする。
持ち物、住環境というのは非常に大切であることがよく分かる。
子供との同居のため、土地を離れた高齢者に痴呆症状が出やすいのも納得ができる。

字数の関係で次回へ続く。

尾崎総合企画
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