ターミナル医療の考え方

現在、ターミナル(終末期)医療について様々な議論が行われている。
リビング・ウィル尊厳死)と安楽死についての境は難しく、延命中止と殺人の境も難しい。
尊厳死については、日本医師会が92年に、日本学術会議が94年に容認しているが、95年3月に横浜地裁が示した「患者の死亡につながる医師の行為を緊急避難の「積極的安楽死」として認める要件」を実際に満たすことは不可能に近い。
一般的にターミナル医療については、次の3つの状態について審議されている。
・がんの終末期
・高齢者医療
・持続的植物状態
この中にはないが第4の状態として「脳死」があるが、脳死判定基準と臓器移植法により一応の結論が出ている。
脳死」については、延命を中止してもよいことになっている。
そんな中、第5の状態が、先日ニュースとなった。
神奈川県の病院が2003年に実施した、新生児の脳死に対する延命治療の中止である。
現在、生後3ヶ月以上の小児には、厚生労働省の研究班が2000年に公表した「小児における脳死判定基準」があるが、生後3ヶ月未満児の脳死判定基準は存在しない。
今回の件では、看護師やソーシャルワーカーも同席して、家族と話し合いを重ねた上で、両親の意向を踏まえて延命を中止している。
ホスピスで有名な淀川キリスト教病院では、院内の指針に基づき、新生児に対して、脳死の他に低酸素虚血性脳症や致死的奇形などの場合でも親が希望すれば緩和ケアへの移行、延命治療の中止を実施する「みとりの医療」を実施しているそうである。
第5の新生児のケースは、特に命の始まりの時期であるため対応が難しい。
生きるのが幸せなのか、延命を中止するのが幸せなのか?
どちらがよいのかは誰にもわからない。
ターミナル医療については、多くの医療機関が苦悩の中、対応を行っている。
「安らかな最期」なのか「命の切り捨て」なのか?
自分がターミナルの状態になったら、どちらを選択するであろうか?
パートナーがターミナルの状態になったら、どちらを選択するであろうか?
親がターミナルの状態になったら、どちらを選択するであろうか?
子がターミナルの状態になったら、どちらを選択するであろうか?
自分が医師であったなら、どちらを選択するであろうか?
人の生死の判断は非常に難しい。

尾崎総合企画
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