持参薬問題について(前編)

前回からの続きです。
 
持参薬管理の徹底をとのことであるが、この持参薬、なかなか厄介なものである。
まずは、薬剤鑑別を行わなければならない。
最近では調剤薬局などが、写真入の薬剤説明書を渡すことが多いが、入院時にその説明書を持参する患者は少ない。
そうなると全薬剤についての鑑別の時間がかかる。
先発医薬品が処方されていればまだ良いが、診療所などの薬では後発品が多い。
後発品が5剤以上になると、これはかなりの時間を要する。
さらに、入院時に看護師が管理しやすいように、薬剤を一包化するケースも増えている。
一包化とは、服用時間毎に複数の薬剤を一つの袋に詰めることである。(朝食後だけの薬、眠前だけの薬、など)
これに要する時間はかなりなもので、一から調剤しているのとなんら変わりはない。
用量・用法が分からない場合などは、前医に照会する時間も必要となる。
持参薬の管理には、このような業務が新たに発生するわけであるが、これに対する保険点数は全くついていない。
すなわち、「ただ働き」なのである。
リスクマネジメントはこのような「ただ働き」の上に成り立っていることが多い。
現在の制度では、リスクマネジメントを実施しなければ減算という体制である。
やはり、安全な医療を提供するためには、十分な人員を確保するための加算でなければならないのであろうか?
持参薬が多いという事は、常にどこかの医療機関に通院・入院しているということ。
安易な処方、安易な服薬がその背景にある。
薬とは本来は「毒」であり、それを薄めて使っているようなもの。
決して、安易に何剤も服用して良いものではない。
薬をもらえば安心する患者と、薬を出せば儲かる医療機関
双方に都合のよいシステムが国民医療費を増加させている。
この持参薬の問題、問題の根底は結構深いところにある。
 
尾崎総合企画
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