変わる訪問介護(後編)

前回からの続きです。
 
定額制という制度自体にもメリット、デメリットがある。
メリットは、報酬の上限を決めてしまえることであり、サービスを希望する利用者の人数を把握することにより予算が立てやすくなることである。
デメリットとしては、導入によりサービスの低下を招く危険性があることである。
これは医療の療養型病床で長い間、問題となっていることである。
経営的に考えると、定額制の中で利益を出すにはコスト削減しか方法がない。
お金を使っても、使わなくても同じ金額が入ってくるのであれば、使わない方がよいという考え方が強くなってくる。
すると、薬を使わない、介護力(人員)を減らす、感染対策をしない、シーツ交換の頻度を減らすなどといった、本来必要なコストまで削減する施設が出てくるのである。
訪問介護においても、利用者は1日5回の訪問を希望しているのに、2回や3回しか訪問しない事業所が現れるてくるかもしれない。
事業所側からしても、無制限な利用への対応は物理的(人員的)に限界が出てくる。
(実際には、時間を加味した定額払い制となる模様)
このあたりの調整を、厚生労働省がどのくらいまできっちりと詰めてくれるのかが今後の鍵となってくるであろう。
食事介助、トイレ介助、オムツ交換、日常生活の見守り、調理、洗濯、掃除など、具体的なサービス内容が検討されている。
改定後は、利用者がサービス内容の一覧というメニューを見ながら、「私は調理と食事介助とトイレ介助にするわ」というファーストフード的な選択となってくる。
選択したサービスは本人の希望に沿った内容となるだろうが、逆に選択していないサービスについては、全く手を貸すことができなくなる。
サービスの細分化というのは画期的な改定だと思うが、シンプルな介護保険システムが少しずつ複雑化していくのは、なんともいえないところである。
 
尾崎総合企画
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