広がる混合診療

次期診療報酬改定において、回数制限のある治療行為が、制限を越えて行えるようになる。
平成17年6月15日に開催された中央社会保険医療協議会の分科会で、制限のある415項目のうち、28項目が混合診療として認められたのだ。
現在のルールでは、回数制限がある医療行為は、その回数までしか医療保険を適用できない。
したがって、回数を超えて実施した場合、医療保険が適用できなくなってしまう。
すると、その医療行為を含めた、他のすべての行為が自費となってしまうのである。
医療関係者でない方は、理解しにくいかもしれないが、簡潔に言うと、
「一部でも自費診療(自由診療)が発生した場合、すべての医療費は全額自己負担になってしまう。」
ということなのである。
介護保険においては、利用限度額を超えた場合、超過した分のみ自己負担となる。
医療制度も、ようやく介護保険制度に追いついてきたのだ。
さて、介護保険の場合、事前にケアプランを立てるため、利用限度額を超えるか超えないか予想ができ、当然ながら事前に本人に了解を得ることになる。
しかし、医療保険の場合はどうであろうか?
「検査しておきましょうね」「薬を出しておきますね」という医師の言葉に、素直に従ってしまう場合が多い。
医師に、この回数制限の医療行為について知識がない場合、よかれと思って出した指示が、患者の自己負担を引き上げてしまうことになる。
現在、混合診療として認められている差額ベッドや大病院の初診料などの「特定療養費」を徴収するためには、患者への了承が必須である。
回数オーバーの医療行為を施行する場合にも、患者への了承は必須となる。
今後、残りの387項目についても検討されていく。
了承される種類が多くなればなるほど、現場は混乱していく。
そもそも、回数に制限をつけた理由について考え直す必要があるのではなかろうか?
過剰な医療を抑制するのが目的だったはずだ。
以前、再診料の逓減制が一時導入されて混乱が生じた。
患者から「なぜ、前回と今回でお金が違うのか?」という苦情が殺到したからだ。
逓減制は、医療機関側にデメリットとなる制度であった。
混合診療は、患者側にデメリットとなる制度である。
形は違うが、実施目的は同じものである。
患者のためなのか、医療側のエゴなのか、それとも回数制限をかけること自体が問題だったのか?
この辺りを勘案して、慎重に解禁項目を検討していただきたい。
 
尾崎総合企画
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