訪問看護ステーションの苦悩

厚生労働省の診療報酬調査専門組織の調査によると、訪問看護ステーションの半数が赤字で、規模が小さいほど採算が合わない傾向にあるという結果が出た。
(回答したのは569の事業所)
在宅医療を促進する中、このような現状では訪問看護ステーションは縮小していってしまう。
なぜ、このようなことが起こるのか?
まずは、訪問看護ステーションの患者層(利用者層)に問題がある。
訪問看護ステーションを利用するということは、病状や介護度がかなり重い状態にあるということである。
病状や介護度が軽ければ、利用料の高い訪問看護を利用せずに、訪問介護を利用する。
病状や介護度が重いということは、(言葉は悪いが)サービスを提供する期間が短いということである。
すなわち、安定した事業計画が立てにくいということ。
病状や介護度が中程度の場合には、訪問リハビリテーションが活用され、安定した収入が得られる。
しかしながら、訪問リハビリテーションの単価は、訪問看護ステーションに属してこその高単価であり、リハビリテーションだけでは単価は低い。
訪問看護ステーションに属するためには、訪問看護ステーションの設置基準に則る必要がある。
すなわち、看護職員が常勤換算で最低2.5人は必要であるということ。
事業所の経費、人件費、車両費などを考えると、看護職員1人あたり、1日平均6〜7人は訪問していなければ、黒字経営は難しい。
 
訪問看護ステーションが黒字経営を行うためには、どれくらいのサービス利用が必要なのだろうか?
単純に常勤換算で2.5人(1ヶ月勤務日数21日)が1日平均6〜7人(利用者1人あたりの利用回数は週3回)とすると、
2.5人×21日×6〜7人÷3回=105〜123人
頭数で105〜122.5人の利用者を抱えていなければ、訪問看護ステーションは成り立たないということである。
(週2回の訪問であれば、158〜184人の利用者)
先ほども述べたが、サービス提供期間が安定しない訪問看護で、この利用者数を維持するのは並大抵の努力ではない。
在宅医療に関心のある医療機関とのコミュニケーションを、かなり密に行っていなければ難しい。
本当に在宅医療を推進するのであれば、看護職員2.5人という基準を撤廃すべきである。
事業に安定性がないというのであれば、他の訪問看護ステーションとの連携を深めればよいだけである。
さらに言えば、訪問看護スタッフが本部管理費を出し合い、ジョイントベンチャー的な総合訪問看護ステーション方式で行うのが良いのかもしれない。
この方式ならば、急用や急病の場合でも、業務の相互補完が行える。
また、訪問リハビリテーションを強化しなければ、在宅医療は促進されない。
そのためには、訪問リハビリテーション単体で事業所を起こしても、現在と同じ単位を算定できるようにしなければならない。
現在の流れを見ていると、本当に在宅医療を推進しているようには思われない。
在宅医療に「思い」のある人々が、安定して働けるように、制度を改革していってほしい。
 
尾崎総合企画
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