医療事故対策の功罪

平成14年の改正で医療安全管理体制が導入された。
マスコミでも、医療ミスや医療事故についての報道が多くなったのもこの頃からだ。
各病院で医療安全管理委員会が設置され、アクシデントやインシデントに関して集計を取っている。
報告人数の比率から、内容の上位にくる職種は看護職であり、その多くが投薬や注射、転倒に関するものであることは致し方ない。
さて、医療ミスを防ぐためには対策をしなければならない。
内容の上位にくる、投薬や注射薬について考えてみよう。
例えば、内服薬を配薬しているうちに薬の残数が足りなくなったとする。
すると、薬を一包化して日付を入れるという対策が行われる。
点滴等の注射薬であれば、過去のように病棟に薬がまとめて配置してあり、そこから必要本数を準備するのではなく、薬局から1日分ずつの注射薬が届くということになる。
これならば、点滴等を重複してしまうというミスは生じなくなる。
医療事故防止対策は確かに必要なのではあるが、対策を行うと必ず業務量は増大する。
1人のチェックであればミスが起こるのでダブルチェックをする。
ダブルチェックでミスが起きれば、トリプルチェックをする。
こうして業務量は増えていく。
また、先程のように一包化した薬剤に日付を入れると、同じ薬であっても日付を間違えて配薬すればミスということになってくる。
結局はミスとは、人が犯すもの。
人の問題なのか、システムの問題なのかを、見極める必要がある。
多くの人が犯すミスであれば、システムが問題なのであるから、全体の改革が必要である。
しかし、ある一定の人しか犯さないミスであればその人自身の問題であるため、その人のために他の人の業務量を増やすことはない。
部署移動が第一の対策となる。
また、過度の防止策は、人の危機感を感じる本能を退化させるため、むしろ集中力を低下させてしまうこともある。
転倒の予防策もしかりである。
転倒の危険性のある患者への監視を強化すれば、おのずと他の患者への看護は手薄となる。
かといって、転倒させないためにベッドに拘束してしまうのは、人道的にどうなのかということになる。
ミスは必ず起こる。
医療安全対策の基本は、業務量を増やすのではなく、減らすことが大切。
そのことを考えた対策が必要なのである。
 
尾崎総合企画
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