包括医療の問題点(後編)

これでは、右から出ていた財源を左に移しただけであり、過剰医療の抑制、医療費削減という主旨から完全に外れた行為となってしまう。
医療収入が上がるということは、同じ医療行為を高い金額で実施することであり、保険財政の圧迫、患者負担の増加に他ならない。
高額医療の急性期とは異なる療養型でも、おかしな問題が起こり始めている。
療養型は、療養を目的とした1日単位の包括医療であるため、骨折、肺炎等が生じると、薬剤費を始めとして、高額な経費(医療費)がかかり、経営が赤字となってくる。
そのため、骨折、肺炎等が生じると、近くの一般病院へと転院させることとなる。
その際に、検査も、処方もせずに転院させ、すべて一般病院で実施してもらい、さらに退院時に長期処方をしてもらい、再度受け入れるということが日常茶飯事となっている。
「医療の棲み分け」といえば聞こえは良いが、結局は利益圧迫となる恐れが生じれば、すぐに一般病院へ転院ということで解決しようとする。
何のために医療療養型では医療行為ができるのか?ということを考えてみなければならない。
話は少しそれるが、現在の医療制度では、入院患者が自院にある科を他院にて受診した場合、療養型では入院料等が70%もカットされることとなっている。
例えば、眼科受診のために他院を受診させ、「ついでに」ということで他科受診をした場合、療養型にとっては、その1日はただ働きに近い状態となってしまう。
患者が「ついでに」内科系の処方薬をもらって帰った日などには、薬を返しに行く療養型も多い。
このように、医療費削減のために考え出された数々の制度には、抜け道や問題点が数多くあり、本来の目的を果たしていない場合が多い。
急性期と療養型を同時に考えるのは、間違っているのかもしれない。
しかし、医療を受けるのは、患者と呼ばれる、我々一般市民なのである。
今、過剰に使った医療費は戻ってこない。
その付けは我々の未来に、財源不足として降りかかってくる。
いわゆる「問題の先送り」というものである。
適切な医療とは何なのか?
医療側も患者側も行政も、深く考え直さなければならない問題である。
 
尾崎総合企画
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