業界の慣例打破

首都圏のマンションなどの耐震構造を示す計算書が偽造されていた問題が波紋を広げている。
業界の慣習、企業の利益追求、検査の形骸化など、様々な問題が取り沙汰されている。
この事件の問題となっている一級建築士のコメントを聞いていて思ったのだが、まるで他人事のように話をしていた。
「業界の慣例じゃないか」
「どこでもやっているじゃないか」
「なにを今さら・・・」
「なぜ、自分だけが・・・」
等の感覚なのであろう。
これに近い問題が医療でも起こっていた。
今や報道も少なくなったが、医師の定数問題である。
医療法で定められた数の医師が配置されておらず、入院基本料の不正請求(減額請求せず)が大多数の病院で明らかになった問題である。
さらに、非常勤医師を常勤として届け出たり、勤務実態のない医師を常勤として届け出たりして、問題は様々な方面に広がった。
この問題処理は、現在進行中であるが、
「昔から当り前じゃないか・・・」
「医師が揃わないから仕方ないではないか・・・」
「定数の医師を揃えると経営が成り立たない・・・」
といった感覚があったことは否めないであろう。
どの業界においても、「業界の常識は世間の非常識」ということであろうか。
もう一つの問題として、役所のチェック体制が挙げられる。
今回の耐震構造計算書の偽造問題でも、民間確認検査機関のチェック体制の甘さ、また、国土交通省自身が年に1回、民間確認検査機関に調査に入っていたにも関らず、ザルの目の如く「問題なし」とされていた。
医療機関の医師定数問題についても然りである。
保健所や社会保険事務局は、原則として年1回、病院に立入検査、個別指導に入っており、勤務表や賃金台帳で医師数を確認しているが、これもまた、ザルの目の如く「問題なし」とされてきた。
役所の責任についても真剣に考えなければならない。
このように、マスコミにより問題がクローズアップされると、あちらもこちらもと問題が大量に発生してくる。
許認可が絡む事業では、どの業界でも同様の問題を抱えている。
経営モラルの問題か、役所の監視が甘いのか、はたまた法律が時代と合っていないのか?
なんにせよ、最終的に被害は顧客(患者)へと回ってくる。
このような報道を機に、各業界のモラルが向上することを願う。
 
尾崎総合企画
http://www.medisoft.jpn.ch