透析患者の自己負担が2万円へ?

平成17年11月11日、厚生労働省人工透析患者のうち、月収53万円以上の人の自己負担上限を、月1万円から2万円へ引き上げる方針を自民党に示した。
現在、透析患者は約25万人であるが、約1割にあたる25,000人が負担増の対象となると考えられている。
人工透析患者は、高額療養費制度の特例により月々の医療費自己負担額が1万円に抑えられている。
人工透析は一生続く治療であるため、自己負担の増加は死活問題となる可能性がある。
医療費が払えないから治療ができないというのは、即ち、死ぬことを意味しており、このようなことがあってはならない。
患者団体からの反発も出ている。
ただ、このニュースについては、報道されている情報が不足していることも否めない。
まず始めに、月収53万円という金額が、一般市民にとってどれくらい多いのかという点である。
社会的弱者には手を差し伸べる必要があると思うが、自立できている方には、一定の負担は必要である。
世の中には千差万別の疾患がある。
より少ない月収の方が、月に何万円もの自己負担を支払っている例はいくらでもある。
次に、人工透析患者は、重度身体障害者であるため、医療費自己負担額に対する助成があり、実質の医療費は無料となっている。
(食事の自己負担金を除く。)
従って、月1万円が2万円になろうと、3万円になろうと、結局は、医療費の財源が移動するだけであり、なんら問題はないのである。
この点を抜きにして考えると、非常に偏った意見となってしまう。
生活習慣病である糖尿病を第一原因として、透析患者は年間1万人のペースで増加している。(導入3万人、離脱2万人)
1人あたり、年間550万円の医療費がかかり、透析患者全体で年間1兆円超の医療費がかかっている。
仮に25,000人が年間12万円の自己負担が増えたとしても、抑制できる医療費は30億円の抑制にしかならない。
その間に、10,000人×550万円=550億円の医療費が年間に増加していく。
さて、コラムの最初と最後で、皆さんの考え方は同じままですか?
 
尾崎総合企画
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