公定価格と購入価格(後編)

ただ、薬価差益を一概に「悪」と決めつけることもできない。
薬剤は公定価格である薬価で請求を行うが、購入した薬剤には消費税が課せられるだ。
すなわち、薬価差益が5%なければ、薬剤を使用すればするほど、医療機関は赤字となっていくのである。
先ほどとは反対に、患者の病気を治すための「道具」であるはずの薬で、医療機関が赤字になってはいけないのである。
従って、2年に1度の診療報酬改定で薬価が見直される毎に、医療機関と卸は価格交渉を行わなければならないのである。
この問題を解決するためには、薬剤、医療材料等に関しては、次の2点の制度が必要なのではないかと考える。
1. 消費税を免除する。
2. 購入価格を公定価格とする。
この2点を実施することで、薬剤、医療材料等は、治療上のただの「道具」となる。
医療機関は卸から公定価格で薬剤、医療材料等を購入し、公定価格で保険請求するのである。
必要な量を、右から左に流すという行為に変わるため、過剰な使用はなくなる。
もちりん、医療機関には1円の利益も出ない上に、過剰在庫、未使用在庫等のリスクを負うことになるため、適切な在庫管理がなされることとなる。
薬価改定の際にも、発売後の年数に応じた価格となるだけで、非常に手間が省ける。
薬価差益がないため、先発薬と後発薬(ジェネリック医薬品)の経営上のメリットも同じとなる。
(薬価差益がないのであれば、経営上、購入額は少なければ少ない方がよい。)
過度な使用量を抑え、後発薬が使用しやすくなれば、医療費の約2割を占める薬剤費は大いに削減されるであろう。
このように、医療機関の利益は診療報酬から適切に得るべきである。
薬価差益や、アウトソーシングによる差額収入を考えて経営を行うのは、医療の本道から逸れている。
厚生労働省は、このあたりを真剣に考える必要がある。
 
尾崎総合企画
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