診断基準と医療費(前編)

2008年度から。40歳以上の人が受ける新しい健康診断の検査項目と判定基準が5月26日に固まりました。
「メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)」の考え方を導入しており、腹囲の測定が必須となっています。

「メタボリック症候群」

この言葉を、最近、よく耳にするようになりました。
内臓脂肪型の肥満に、高脂血症や高血圧や高血糖の症状が重なると、それぞれは深刻でなくても心筋梗塞脳卒中などに進行する危険性が高まるという状態です。
厚生労働省が実施した2004年国民健康・栄養調査の結果では、成人の有病者は約1300万人と推計されています。
有病者一歩手前の“予備軍”も約1400万人で、両方合わせると約2700万人にものぼります。
この数字を見て、皆さんはどのように感じられますか?
日本人の5人に1人が、メタボリックシンドロームであるなんて。

メタボリックシンドロームの診断基準は次の通りとなっています。

必須項目として(内臓脂肪蓄積(内臓脂肪面積100平方cm以上)のマーカーとして)
エスト周囲径が男性で85cm、女性で90cm以上を「要注意」

その中で

?@血清脂質異常(トリグリセリド値150mg/dL以上、またはHDLコレステロール値40mg/dL未満)
?A血圧高値(最高血圧130mmHg以上、または最低血圧85mmHg以上)
?B高血糖空腹時血糖値110mg/dL)
の3項目のうち2つ以上を有する場合

心臓病などの予防に内臓脂肪症候群を重視するのは合理的と言えます。
しかし、診断基準のうち、腹囲は、米国では男性で102cm以上となっているのに対し、日本人男性は85cm以上と、かなり厳しく設定されています。
女性の基準では、日本人は90cm以上と米国人の88cmより緩やかなのと対照的です。

日本の診断基準は、たった数百人の調査対象から作られたものであり、その結果、約2700万人もの人がメタボリックシンドロームという診断名がついてしまうのは、いかがなものかと思います。
 
字数の関係で次回へ続く。
 
尾崎総合企画
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いつまで喫煙しますか?(後編)

前回からの続きです。
 
たばこの害を測定するために、喫煙係数というものが使われます。
喫煙係数 = 1日の平均喫煙本数 × 喫煙年数
例えば、1日に20本のタバコを吸う人が、20年吸い続けているとすると、
20本×20年=400
この400という値を覚えておいてください。
喫煙係数が400を越えると、肺癌にかかる確率が飛躍的に上がることが統計的に知られています。
喫煙係数が600を越えると、心臓病などにかかる確率が高くなります。
喫煙をされている皆さんの喫煙係数はいくらでしょうか?
タバコを減らすだけでも、将来のリスクは大きく軽減します。
例えば、1日5本のタバコであれば、80年吸い続けてようやく喫煙係数が400になります。
1日10本なら、40年で喫煙係数が400です。
このくらいまでなら、意思の力で減らせるのではないのでしょうか?
しかし、タバコには精神的依存と、肉体的依存が存在します。
従って、ニコチンが入らないと、イライラして、逆にストレスが溜まることがあります。
これはニコチン不足が原因です。
そこで、前編にも出てきたニコチンパッチの登場です。
ニコチンを体に補充してあげることで、禁煙成功率は飛躍的に向上します。
ニコチンが入るなら同じじゃないか!と言われる方。
全く違います。
喫煙は、ニコチンだけでなく、タールやその他様々な物質が、肺の中へと入っていきます。
それらは、すべて肺にこびりついていくのです。
ヤニで黄色くなった壁を見て、何も感じませんか?
あの状態があなたの肺の中に起こっているのです。
決して良いものではありません。
禁煙は1人で実施するのはなかなか難しいものです。
そのために、禁煙治療という方法も一つの選択です。
さて、そろそろ考えてみませんか?
 
尾崎総合企画
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いつまで喫煙しますか?(前編)

愛媛でも愛媛大学および愛媛大学病院内が構内禁煙を決定するなど、喫煙者にはますます厳しい環境になってきています。
タバコも税金が上がり、今こそ、タバコを止めるときなのかもしれません。
この4月より、禁煙治療に保険が適用されることとなりました。
禁煙治療が医療?と思われるかもしれませんが、未来に起こりうる様々な疾病の予防と考えたら納得できます。
禁煙治療の開始に際しては「禁煙ガイドライン」に沿って実施されることとなります。
このガイドラインでは、「ニコチンパッチ」なる、ニコチンの貼り薬を用いることが推奨されています。
しかし、面白いことに、これまではニコチンパッチは保険適用になっておらず、自由診療扱いでした。
すなわち、全額自費ということ。
禁煙治療が保険適用になっても、治療の基本であるニコチンパッチを処方すると、混合診療となってしまい、全額自費となってしまうという、訳が分からない事態が発生してしまいました。
全国の禁煙治療を行っている医療機関では大パニックです。
こうした事態を受けて、厚生労働省はニコチンパッチを公的保険の対象とすることを明らかにしました。
近く、中央社会保険医療協議会を開き、5月中には保険薬とする予定だそうです。
新しい制度を決めても、古い制度が邪魔をする。
法律って難しいですね。
順調にニコチンパッチが保険薬として承認されれば、6月からは安心して、禁煙治療に取り組めます。
百害あって一利なし、多勢に無勢。
やはり、今が潮時なのかもしれません。
 
字数の関係で次回へ続く。
 
尾崎総合企画
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「清潔」「不潔」「きれい」「汚い」(後編)

前回からの続きです。

以前、介護施設におけるノロウイルスが世間を騒がせました。
ノロウイルスは経口感染、すなわち病原菌が口から入って感染を起こします。
原因は、オムツ交換の方法にあると言われました。
多くの施設は、利用者への愛情のため、素手で行っていることが多く、きちんとした手洗いを行わないまま、次々とオムツ交換を行い、ウイルスをばらまいてしまいました。
手袋を着用している施設でも、経費削減のため、手袋を交換しないまま、次々とオムツ交換を行い、ウイルスをばらまいてしまいました。
これは、ひとえに「清潔」「不潔」の概念を理解していないことが原因です。

手を洗って「きれい」に見えても、「清潔」ではありません。
手洗い実験で、特殊なローションを塗りこんで手洗いを(いつもより)十分にしてもらって、その手を紫外線に当てると、みごとなまでにローションが残っていることがわかります。
10人実験を行うと、8〜9人はこの状態です。
手を洗って「きれい」になったように思っていても、実は手を濡らしただけということが多々あるということです。

手洗いには、日常手洗い(Social handwashing)と、衛生的手洗い(Hygienic handwashing)があります。
日常手洗いは、石けんと流水による手洗いで、日常業務で表面に付着する「汚れ」や細菌を除去することが目的です。
これに対し、衛生的手洗いは、感染の予防策として行う手洗いであり、皮膚通過菌の「ほとんど」を除去することを目的とします。

日々の業務の中で、日常手洗いでよいものと、衛生的手洗いが必要なケースを分けて考える必要があります。
また、いくら手洗いしても、衣服の袖をまくったり、顔や髪の毛を触ると、手洗いの意味は一瞬でなくなってしまいます。

このコラムを機会に、「清潔」「不潔」の概念について、改めて考えてみていただければと思います。

しかし、改めて考えてみると、医療機関の制服は毎日、選択する必要があるのでは???
特に、制服のまま昼食等で外出されているスタッフ。これはいけませんよ!

尾崎総合企画
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「清潔」「不潔」「きれい」「汚い」(中編)

前回からの続きです。

先日、県外出張をした際、ある麺類チェーンのお店に入りました。
スパーバイザーの方が指導に来られていたのですが、なんと、スーツで狭い厨房の中に入っておられました。
給食業務を行われている方から見れば、信じられないことです。
外回りをして、様々な細菌がついたスーツで、各厨房をまわっている。
これは「清潔」ではありません。

しかし、ここで考えてみました。

それでは、調理スタッフの制服は「清潔」なのでしょうか?
これは、医療機関介護施設の制服にも同様のことがいえます。

おそらく、制服を洗濯に出すのは、週1〜2回程度ではないでしょうか?
白衣の天使?である看護師さんも、予防衣こそは頻回に取り替えても、基本のナース服は数日〜1週間は着用しているはずです。
日常生活で、私服をこんなにも長期間着ることがあるでしょうか?
事務の方は、スーツは長期間着ていますが、シャツは毎日替えています。
となると、ナース服を着用した看護師さんと、上着を脱いでシャツの状態の事務の方と、どちらが「清潔」なのでしょうか?
極論をいうと、通勤時に着用している私服と、職場で着用している制服のどちらが「清潔」なのでしょうか?ということになります。

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「清潔」「不潔」「きれい」「汚い」(前編)

突然ですが、
「清潔」「不潔」の違いを説明することができますでしょうか?
言い方はいろいろあると思うのですが、

「清潔」 感染が成立するだけの病原微生物がいない状態
「不潔」 病原微生物が生存している状態

ということになります。
この言葉をしっかりと理解しておかないと、「きれい」「汚い」の感覚で仕事をしていることがあります。
「きれい」「汚い」とは、見た目の感覚です。
整頓されている部屋、散らかっている部屋と。
前者は「きれい」で、後者は「汚い」ですよね。
ただし、前者が「清潔」で、後者が「不潔」といえるかというと、それはまた、別問題なのです。

例えば、養豚場のSPF豚というのを聞いたことがありますでしょうか?

妊娠末期の豚から帝王切開などの外科的方法で子豚を無菌的に取りだして人工哺育をすると病気のない豚群を作ることができます。
豚の発育に悪い影響を与える、マイコプラズマ肺炎、萎縮性鼻炎、豚赤痢、オーエスキー病、トキソプラズマの5つの病気の侵入を防ぐために農場の周りをフェンスで囲ったり、 搬入する資材などは厳重に消毒したり、入場する人間も厳しく制限したりします。
入場する人間は必ず入浴して全身をきれいに洗い場内専用の衣類に着替えなければなりません。
SPF = Specific Pathogen Free
すなわち、感染を起こすような特定の(Specific)病原菌(Pathogen)がない(Free)状況で飼育されている豚のことをいいます。

感覚的にいうと、養豚場は「きれい」とはいいにくいかもしれません。
ただし、特定の感染面から言えば「清潔」なのです。

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尾崎総合企画
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外出をしよう(後編)

前回からの続きです。

外出をするには、思いつきでできる場合と、計画が必要になる場合があります。
思いつきでできる場合は、例えば、近場の公園に花を見に行くとか、買い物に行くとか、散歩に行く場合などが挙げれます。
いわゆる「ちょっとした外出」です。
一般の方が、日頃、当たり前に行っていることも、十分に「外出」といえます。
計画が必要になる場合というのは、遠くへの外出や、美術館などの施設など、目的地がある場合となります。
この場合には、事前に下見をされることをお奨めします。
例えばトイレ。
特に車椅子用である必要はありませんが、介助するスペースがあるのかどうかという確認は大切です。
駐車場から目的地の入口までの位置関係も大切です。
駐車場から歩く距離が多くては大変です。
公共施設や大型のショッピングセンターであれば、入口から近い位置に車椅子駐車場がありますので安心です。
駐車場がない場合は、入口前に車をつけることが可能かどうかの確認が必要です。
外出日は、お天気に恵まれないときもあります。
その際は、入口横に、屋根が張り出しているのかということが重要になります。
濡れずに、施設の中に入ることができるのかどうかで、外出できるのか否かが変わってきます。
どれも当たり前のことなのですが、事前に確認しておくことで、外出行事が楽しく円滑に進みます。
電話での確認でもよいのですが、現実とのギャップが出てくることがありますので、できる限り、下見をされることをお奨めします。
不安な場合は、ケアマネを通してでも、通所系・入所系介護サービス提供事業所に聞いてもらってください。
思ったよりも、たくさんの外出先があるはずです。
これから気持ちのよい季節です。
楽しい外出をされてください。
 
尾崎総合企画
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